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「入学式ぼっち」に追い詰められる10代事情

進学・進級シーズンのこの時期、10代の投稿で多くなるのが「ぼっち」だ。以前ご紹介したとおり、特に10代の若者たちは自分が1人ぼっちになることを忌み嫌う。かわいそうな存在と思われないために、トイレで隠れて食事をする通称「ランチメイト症候群」(便所飯)になったり、1人でお昼ごはんが食べられず登校拒否になったりする人もいる。

 彼らにとって、1人ぼっちは誰にも見られたくない恥ずかしいことだ。だからこそ、誰かに指摘される前に、自分で「#ぼっち」「#ぼっち飯」などのハッシュタグを付けてSNSに公開する。「人に言われる前に自分で言ったらギリギリセーフ」という話を女子大学生に聞いたことがある。投稿することでネタとして昇華され、周囲に受け入れられるようになるというわけだ。

 以前から高校生や大学生から、「入学式は黒歴史だった」「ぼっちは辛すぎる」という情報を得ていた。試しにTwitterで「入学式」を検索すると、「ぼっち」が検索候補として表示される。「入学式 ぼっち」の検索結果はかなり悲壮感が漂っている。


「入学式 ぼっち」といううツイートはこの時期多数投稿されている

 

「さっき入学式だったんだけどぼっち極まりすぎてしにました」

「入学式ボッチ参戦 味方はパパママだけ!」

「入学式、ただ今ぼっちです スマホの充電のヘリが早い」

「入学式でぼっち嫌だから今更大学垢作成」

 中には、3人で撮った写真を掲載しながら、

「左2人はニセ入学生です。一緒に入学式出てくれたから、ぼっち回避笑」

 という、ぼっちが怖いあまりに友人を動員している学生までいた。

 大人世代は入学式から友だちがいないのは当たり前だと考えるが、10代にとってはそうではない。今時の入学式と「ぼっち」事情について考えていきたい。

「一緒に写真を撮る相手がいるかどうか」が大切

 進学先の学校で入学式初日に1人ぼっちになるのは、ある意味必然だ。高校や大学など、同じ学校から進学する友だちがいない例は少なくないだろう。しかし、「入学式」で検索すると、なぜか複数人で楽しそうに撮影した写真ばかりが表示される。後述するが、入学式なのにすでに友人関係があるのだ。そんな中、まったく友だちがいない状況で入学式を迎える学生もいる。みんなが入学式時点で友だちがいるのに自分だけいないことが浮き彫りとなり、かなり辛い状況であることが推測できる。

 

 「唯一誰かと撮れた写真や。ずっとぼっち寂しかった。まあ新生活がんばろう」と、かろうじてツーショット写真を載せている男子高校生もいた。もちろん、「一緒に写真撮る相手いませんでしたぼっちでした…」と1人きりの写真を寂しそうに公開している学生もわずかながらにいる。つまり、一緒に写真を撮る人がいることが、“ぼっち”ではない証なのだ。入学式なのにSNSに公開する写真が撮れず、かつての仲間に“ぼっち”を晒さねばならないことが、彼らの心を傷つけていることがうかがえる。

 事前にSNSなどでこの情報を得ていた学生たちは、この状況を恐れる。そしてぼっちにならないために、「#春から◯◯大」「#春から☓☓高」などで同じ学校に進学する友だちを募集し、入学前に友だちを見つけてぼっちを避けようする。それが、「大学垢」であり「高校垢」だ。ほぼ情報戦であり、実際多くの学生たちがSNS経由で同じ学校から進学する友だちを見つけたり、他の学校から進学する人と事前に連絡を取り合って、入学式でのぼっちを避けている。

 情報がなく事前に友だちを作っていない学生ももちろんいる。しかしそのような学生は、「なんでみんな入学式なのに友だちができてるの。この学部から◯大行った人誰もいないから知り合いすらいないんたけど辛い。みんなぼっちかと思ってたら俺以外は普通に知り合い何人かいるやつじゃんつらい」と嘆いている。

インスタでの「ぼっち」は言い訳ハッシュタグ

 一方、Instagramでのぼっちの扱いは少々異なっている。ハッシュタグ「#ぼっち」は8万9000件、クリスマスを1人で過ごす「#クリぼっち」は2万500件投稿されている。2016年のクリスマスシーズンには、1人分のミニクリスマスケーキや小さなクリスマスツリーなど、クリスマスを1人で過ごす人たちのための、クリぼっち商品も多数登場して話題となった。

 元々Instagramは、リア充っぽい写真を投稿する場だ。そこで「#ぼっち」は、以前ご紹介したように周囲に嫌われないために自らオチをつけたり、言い訳をしたりする言い訳ハッシュタグとして使われている。たとえば「#でもぼっち」は、リア充っぽい美味しそうなお洒落ご飯の写真についていることが多い。この場合は、ぼっちはあくまで追加情報であり、実際に公開したいのはリア充写真の方だ。そして、「クリぼっち」のようなあまり公開したくないことは、他人から突っ込まれる前に自分で公開することで「ギリギリセーフ」の状態となるわけだ。

  • #ぼっち

  • #でもぼっち

 

他人の目を恐れすぎない心を育てたい

 今更自分だけがぼっちなことに気づいた学生が、

「今日誰か昼飯一緒に食べてくれませんか・・・ぼっちはいやだー ◯◯大文Aです。#拡散希望 #DMお願います」

 とネット上でランチを一緒に食べる友だちを募集している例も少なくない。今時10代は、事前に友だちを見繕っておく必要があるのだ。

 すべてをSNSで公開する今時10代にとっては、ぼっちであることは前の学校での人間関係にも影響を与えかねず、恐ろしいことのようだ。しかし、新生活は始まったばかりであり、新しい人間関係はこれから作ればいい。他人の目を恐れすぎず、勇気を持ってリアルの場で話しかけて新しい人間関係を作っていってほしいと思う。

 時折、ぼっちを恐れすぎるあまりに登校できなくなる学生もいる。しかし、実際は自分が考え過ぎなだけであることが多い。そのようなことがないよう、強い心を育てるよう心がけていってほしいと思う。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

(下記サイトより)

https://japan.cnet.com/article/35099367/

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